ことばが遅い、吃音、発達障害などの言語相談、子育てに関する心理相談をしています。

小児科医の立場から出生前診断について考える

私は長年、障害をもっている子どもたちの相談にのってきました。1998年に出生前診断の1種である母体血清マーカー検査について、親たちにアンケートを実施しました。この検査は妊婦から採血して数種類のホルモン等を計り、胎児が二分脊椎症か、ダウン症である確率を計算します。確定診断をするには羊水検査が必要で、その後、妊娠中絶をするかどうか、親は選択します。

アンケートの集計をしたところ、この検査を知っている人は3割程度で、障害を持っている子の中絶は障害者差別だと思うと答えた人は半数を越えていました。

新しく開発された無侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)は妊婦の血液中に混じっている胎児と妊婦のDNAの断片の量を調べて、第13、18、21番目の染色体数が多いかどうかを判断します。確定診断をするには羊水検査が必要です。限られた医療機関で臨床研究を開始するという名目で、普及が図られ始めました。

日本産婦人科学会は2009年までの10年間に出生前診断後、母体保護を名目に妊娠中絶した数は11706件で、それ以前の10年間と比べて倍増したと報告しています。

1948年制定の優生保護法下では、本人の同意なしに優生手術を実施する規定がありました。1996年には優生条項を外した母体保護法にかわりました。優生保護法では国が強制的に遺伝性疾患をもった子どもの出生を排除して来ましたが、上記のような出生前診断の普及は、生むか生まないかを個人の自己決定権に委ね、同様の働きをします。妊娠と出産、子育てが、巧妙に国家の意思に絡めとられていく現状について、皆さんと一緒に考える機会としたいと思います。

参考文献:
『知っていますか?出生前検査』1999年 梅村こども診療所 500円
『ちいさい・おおきい・よわい・つよい』2013年4月号 ジャパンマシニスト社 1260円

(2013年5月19日日本社会臨床学会におけるシンポジウム『生命観の変化を考える~胎児診断と延命医療の現状から』において報告した内容です)

 

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