いつも、相談室に来た子と本を読んでいる。だいたいは、読みきかせだ。『春のオルガン』は12歳の女子と読む本としては、ピッタリな素材だった。

どうやって読もうか、読みきかせをするには年齢が上過ぎる。黙読して話合うのも、陳腐な感じ。結局、私達が選んだのは、息の続くところまで読んで、相手と交代する音読だった。

私は、既にこの本を読み、泣いてしまった場面がいくつかある。そこで、泣かずにすむかどうかが、私にとって勝負どころだった。

 

一箇所だけ、泣いてしまった。

153ページ:

「だけど、おじいちゃんはそのとき、そのちいさい女の子ばかりをせめたんだ。悪いのはタカシだ。それなのに、タカシには見向きもしないで妹をぶった。それがどういうことか、わかるか」

「あんな後味の悪いことはなかった。なんにも知らない、小さな妹をいためつけたりして。なぐるならタカシをなぐればよかったんだ。たかかが運動靴のために、自分があんなに卑怯になれるなんて思ってもみなかったよ」

前後は省く。

本を一緒に読む。50歳以上年齢が離れている二人が、一時を共有することができる不思議。

6時過ぎに終わると12月の外は暗い。終わってから自転車に乗った彼女の脇を小走りについて家まで送り届けた。

この街に立っている電波塔は、毎日、翌日の天気予報をする。紫は晴れ、水色は雨、白は雪というように。

クリスマスの前後3日間、この灯がクリスマスカラーになる都市伝説を確かめられたのが、ご褒美のようなもんだった。塔の上に大きな星、続いて緑、裾の方の赤は家々の屋根に埋もれていた。

(『春のオルガン』湯本香樹美作 徳間書店)