高次脳機能障害ー見落とされがちな障害

北多摩北部地域高次脳機能障害者支援ネットワーク協議会の鴨下医師から電話をいただいたのは、初夏の頃でした。私が30年前に言語指導をしていた青年の社会的リハビリテーションについて、市民を対象にした講演会を開くので、当時の主治医として発表を依頼する電話でした。

彼とは毎年、年賀状のやりとりをしたり、たまに診療所に尋ねてくれた時に近況や趣味について話をしていたので、驚きながらも引受けることにしました。

高次脳機能障害情報•支援センター(国立リハビリテーションセンター内に設置)の定義によると、高次脳機能障害とは:
ケガや病気により、脳に損傷を負うと、次のような症状がでることがあります。
記憶障害
・物の置き場所を忘れる。
・新しいできごとを覚えられない。
・同じことを繰り返し質問する。
注意障害
・ぼんやりしていて、ミスが多い。
・ふたつのことを同時に行うと混乱する。
・作業を長く続けられない。
遂行機能障害
・自分で計画を立ててものごとを実行することができない。
・人に指示してもらわないと何もできない。
・約束の時間に間に合わない。
社会的行動障害
・興奮する、暴力を振るう。
・思い通りにならないと、大声を出す。
・自己中心的になる。

これらの症状により、日常生活または社会生活に制約がある状態が高次脳機能障害です。

とあります。交通事故で頭部損傷を受けて回復した患者さんが、職場に復帰した時、一見回復したように見えても、このような症状のため、事故前と同じ仕事ができなくなって気づかれることがあります。

まず、高次脳機能障害に気づくことが第一歩です。次に医学的リハビリテーション、職業的リハビリテーション、社会的リハビリテーションを連携して行い、地域の中で自立した生活をおくれるように支援します。

北多摩北部地域高次脳機能障害者支援ネットワーク協議会では下記の要領で市民向けの講演会を行います。私は交通事故後間もない時期の状態について、当時、高次脳機能障害の視点をもって、彼に接していなかった反省も含めてレポートする予定です。

どうぞ皆さんご参加下さい。