「昨晩、急に吐きました」と言って、お母さんが子供を連れてくるようになると、外はたいして寒くもないのに、もう、冬が来たんだなと分かります。そして、その週の内に次々と吐いたり、下痢をしたりする子供がやってきます。胃が空っぽになっても、繰り返し吐き続け、胃液まで吐いて、顔色が良くありません。熱もあります。やがて、水の様な下痢になり、便の色が白色になります。せきや鼻水も出てきます。
冬に流行する子供の下痢症は、ほとんどがロタウイルスによるものです。生れて間もない赤ちゃんはあまりかからず、生後6カ月から2歳までの子供がよくかかります。麻疹(ましん)や水痘のように、一回かかったからといって、二度とかからないという保証はありません。小学生のお兄ちゃんお姉ちゃん、それに両親もダウンして、一家全員がかかることもあります。
怖いのは脱水症です。下痢と嘔吐(おうと)によって、体内の水分と電解質が失われてしまいます。まず、おしっこの量が減り、皮膚がしわしわになってきます。植物がしおれたときのように、元気がなく、ぐったりします。さらにひどくなると、意識がなくなって、けいれんを起こします。日本のように栄養状態の良い国では、下痢症で死亡することはなくなりましたが、東南アジアやアフリカでは、多くの子供が下痢症からくる脱水症で、命を落としています。ワクチンによる予防方法の研究が現在進行中です。
吐き始めたら、まず、数時間はおっぱいやミルク、食事を与えないで、お茶やイオン飲料を、少しづつ飲ませるだけにします。子供はのどが渇いているので、一気にたくさん飲もうとします。そうすると、胃を刺激してまた、吐いてしまうので、欲しがってもたくさんあげてはいけません。
吐き気が落ち着いてきたら、少しづつおっぱいや、薄めたミルク、おかゆなどを与えてみましょう。腸が動きだして下痢をしますが、吐かなければ大丈夫です。下痢が止まるまで、数日はかかります。子供の食欲と、便の様子を見ながら、徐々に普通の食事に戻します。
小さい子供の脱水症は、うっかりしていると、どんどん進行してしまうので、早めに近くのお医者さんに相談してください。吐き気止めの座薬を使うと、ひどくならずに済みます。それでも止まらないときは、入院して点滴注射をしなければなりません。