30年前に、私が小児科医になったころと比べて、子供が育つ環境は変わってきました。兄弟の数が少なくなっています。先日、受診した子にいとこの数を聞いてみたら、父方母方合わせて、3人との答えが返ってきて、びっくりしました。ちなみに私は21人です。
「少なく産んで賢く育てる」が、今どきの育児のコンセプトです。出生前診断をすすめる産科医や、乳幼児健診をていねいにする私たち小児科医が、その片棒を担いでいないとは言えません。身近に、同年齢の赤ちゃんから思春期を迎えた子供まで、「障害児」も含めて様々な子がたくさんいれば、育っていく過程の見通しが持てます。
この子が今、どの成長段階なのか相談されたら、専門家は平均的な答えしか用意できません。血が通わないモデルに合わせて育てられる子供は、窮屈なことでしょう。どうか、自分たちの手で、多様な子供と大人の輪を広げる工夫をしてください。
子供は日々、成長し続けています。生き物ですから外界と触れ合って、けがや病気をするのは当然のことです。風邪や水痘のウイルスが体に入るからこそ、抗体ができて丈夫になります。あまり大事にし過ぎて、“無菌状態”にするのは考えものです。
「いつ病院に連れてきたらよいですか」と、お母さんたちから相談されます。小さな傷は、自然とふさがるように、鼻水くらいで治る風邪も多いものです。私は投薬治療は最小限にして、自然に治癒する力を邪魔しないようにしたいと思っています。
しかし、初めての赤ちゃんがくしゃみをしても心配で、おろおろするくらいなら、すぐに相談してください。病院に連れていくタイミングは、生死にかかわるとき以外は、その家庭の時々の判断でよいのではないでしょうか。
アトピー性皮膚炎や気管支ぜんそくのように、アレルギー体質が原因ですぐに治らない病気もあります。おねしょもすぐには治りません。でも、成長するにつれて、いつの間にか起こらなくなっていきます。焦って、情報に踊らされることなく、気長に構えて対処する知恵を身につけていきましょう。
「うちの子だいじょうぶ?─」では、毎日、子供と一緒に暮らしておられる皆さんに、子供の体のこと、病気のことを中心に、お話ししてきました。この連載を読んで「うちの子は大丈夫」と、少しでも安心してくだされば、うれしいです。