気候が変わりやすく、気温も下がってくると、てきめんにかぜひきが増えてきます。
先日も夜の10時頃「熱が40度近くあるので、解熱剤をください」と、一歳児のお母さんから電話がかかりました。高熱はとにかく下げなければ、という気迫の強さに、電話口での説得も効果がなく、解熱剤の座薬を処方することになってしまいました。
「熱の高さは病気の重さとは関係ありません」と、医者がいくら強調しても、家族は不安に駆られます。「熱が高いと脳がやられるんじゃないでしょうか?」こんな質問を受けることがありますが、41度までは大丈夫、熱だけで脳に障害を遺すことはありません。
何が原因で熱が出ているかが問題です。子供の発熱の大部分は風邪をはじめとするうつる病気です。熱がでると、3・4日は続き、自然に下がるものです。咳や鼻水がひどい場合は鎮咳(ちんがい)剤などの薬を処方しますが、あくまでも対症療法です。ウイルスによる風邪には、抗生物質は効きません。
熱があっても、顔色が真っ赤で、食欲もあり機嫌が良ければ、心配することはありません。熱が38.5度をこえて機嫌が悪く、ぐったりしているようなら解熱剤を使ってもかまいません。しかし、一度使つても熱が下がらないからといって、すぐにまた使わないように、4・5時間は空けるようにしてください。
近頃では熱の高さに惑わされないで「解熱剤は要りません」と言う頼もしいお母さんも増えてきました。
家庭で氷まくらを使ったり、受診時に額に冷却剤を貼ってくる子がいますが、これで熱を下げることはできません。服を着せ過ぎないようにして、部屋も暖め過ぎないようにします。熱がある時は脱水状態になりやすいので、水分だけはせっせととらせてください。
4日間以上の熱が続くときは、かぜから気管支炎やその他の合併症を起こしていないか考えてみます。重大な病気が疑われる場合は、早めに病院で検査を受けてもらうこともあります。また、生後4カ月までの赤ちゃんの発熱には用心し、早めに病院で検査を受けるよう勧めます。
毎月、風邪を引いて熱を出す子のお母さんは、肩身がせまそうに「また、風邪を引かせちゃって」とやってきます。でも風邪のウイルスは250種類以上もあるのです。「風邪引きは丈夫のもと」です。風邪を引いて抵抗力を付けましょう。