子供を育てていて驚かされるのは、一見何の苦労もなく、きのうできなかったことが、きょうはできるようになっていくことです。寝たままだった赤ちゃんが、1歳を過ぎてしばらくすると歩いているのですから。一緒に生活しながら、赤ちゃんの育ちを待って「あらあら」と喜ぶことができたら、それが一番自然なことです。しかし、現代の育児は待つことが下手で、とてもせっかちです。
赤ちゃんは生後1カ月、4カ月、7カ月、10カ月と誕生日までに4回、小児科医による乳児健診を受けるようになっています。さらに1歳半、3歳、就学時健診もあります。義務ではないので、受けたくない人は受けなくても構いません。
どの健診でも身長、体重を測り、発達の様子をチエックして、病気がないかどうかを診断します。自分の子を育てるまでは、ほかの赤ちゃんに接したことのないお母さんにとって、乳児健診はひとつの目安として役立ちます。その反面、「できる」「できない」ことに振り回される現象も生じています。
4カ月健診で引っ掛かることが多いのは、首の座りが遅いことです。立てて抱くと、まだ首がしっかりしないので、手を添えてあげなければなりません。うつぶせが苦手で、しばらくすると泣いて、「嫌」のサインを出します。このタイプの赤ちゃんの多くは1カ月待てば、首が座ってくるので、だいたいは取越苦労をしてしまったということになります。
10カ月健診では、全く這わないで、座ったまま脚を器用に動かして移動する赤ちゃんもいます。この子たちはつかまり立ちもなかなかしません。歩くためには十分な這い這いが必要と考えられているので、周りは心配します。でも、大丈夫。遅くても1歳半過ぎから2歳には歩くようになります。歩くというヤマを越えるには、いろいろなコースがあり、そのスピードも子供によって違うのです。
ところで、乳児健診で運動発達の遅れがあると診断され、リハビリに通う子供たちもいます。中には歩くようになる子もいますが、歩かずに車いすの生活をする場合もあります。日本ではまだ、この子供たちの保育園、幼稚園の入園が厳しい所もあると、私たちの最近の調査で分かりました。
できることはうれしいけれど、できなくったって平気。垣根を外して、この子供たちとどうしたら対等に付き合っていけるか、試み続けていきたいものです。